障碍者雇用率…会社にとって悩ましい言葉の1つではないでしょうか。平成30年4月1日からその法定雇用率が2.0%から2.2%に引き上げられ、平成33年3月31日までの間に2.3%まで上げられると言われています。
うちの会社でも先日まで法定雇用率を優に上回る2.4%で1人分多くの方に勤務頂いていたのですが、急遽2人が退職することになって急いで採用活動を始めなければいけなくなりました。
雇用義務の対象とされる障碍者は?
平成30年3月31日までは身体障碍者と知的障碍者のみで精神障碍者は雇用率の計算に含まれるのみでしたが、平成30年4月1日からは精神障碍者も雇用義務とされることに改定されました。
ですが、雇用率の計算に含めるためには『精神障碍者保健福祉手帳』を持っている方に限られます。
…精神障碍者と聴くと、なんとなくのイメージでマイナスな印象を持つ方も少なくないと思います。
うちの会社では精神障碍者も多く勤務頂いているので、そういったことはありませんが、今回退職された方が全員精神障碍者で、最後は病状の悪化で周囲も苦労した末に退職という、マイナスな印象で終わってしまったので新たに同じ病気を持たれている方を迎えるのはハードルが高いかもしれません。
精神障碍とは?
では、その精神障碍とはどういった病気を持たれている方なんでしょう。
気分障碍(うつ病、そう病、そううつ病)
これは精神障碍の代表格と言えると思います。
そんな気分障碍とは、気分の浮き沈みが一定の期間、正常な範囲を超える状態になる病気です。
以下の兆候が現れると気分障碍である可能性があるかもしれません。
・遅刻や欠勤が増える
・仕事が滞る
・口数が少なくなる
・表情や顔色がさえない
・様々な身体の不調を訴える
・食事量が少なくなる
・自分を卑下し「申し訳ない」といった発言・動作が見られる
・辞職をほのめかす
健常者であってもいつ、精神疾患を患うかわからない社会だと言われていますので、周囲の方の様子がおかしく、上記のような状況の場合は専門医の診断を勧めることが必要かもしれません。
現に精神障碍者で上記に当てはまる場合は病状が悪化している可能性があるので、これも掛かりつけの医師に診てもらうように促す必要があります。
統合失調症
この病気の多くは15歳から35歳の間で発症しており、中でも10代後半から20代前半に多いと言われています。
そしてこの病気にかかる確率は1%弱と言われているので、比較的よくある病気と言えます。
症状としては自分の悪口や噂話、命令などの「幻聴」
他者から危害を加えられる「被害妄想」
自分が偉大な人物と思い込む「誇大妄想」
などがありますが、この多くは服薬によってコントロール出来ると言われています。
これはうちの会社で実際に勤務されていた方の事例なのですが、症状が顕著に現れてきたので掛かりつけの医師に相談するように促し、きちんと受診しているようなのに一向に改善の傾向が現れないことがありました。
そこでその方の支援員に相談して医師と連携を取り、話を整理すると「被害妄想」と「誇大妄想」が同時に出ていました。
具体的には、会社では被害妄想から泣き出したり、ロッカーに引きこもったりしているのに、病院では誇大妄想から自分の良いところだけを話すといった悪循環で治療が進まないといった事例です。
その時はおかしいと思って支援員に相談出来たから良かったのですが、そうでないともっと大変なことになっていたかもしれません。
精神障碍者を採用するにあたっての配慮
募集・採用面接時の配慮
精神障碍者は人と接することに恐怖する傾向にあります。
もしかしたら病気のせいで悪い印象を与える発言をしているかもしれない。相手からどのように見られているか心配。このように考えて、話したいことも満足に話せない傾向にあり、緊張感のある採用面接の場では特にその傾向が出やすいと言えます。
そこで面接の際には就労支援機関の職員等に同席してもらって、普段の様子や配慮しなければいけないことをしっかりと確認することはもちろんですが、それ以上に緊張を可能な限り取り払い普段通り話が出来るような環境を作ることが必要だと思います。
採用後の配慮
指示や説明が人それぞれ違う…これは新人教育の「あるある」と言えることではないでしょうか。
しかし、精神障害者にこれをしてしまうと混乱を招いてしまい、何が正しいのか”もやもや”した気持ちが病状の悪化に繋がる可能性があります。
そこで、仕事の教育や指示・命令をする担当者を1人決めて、まずはその担当者がパートナーとなって仕事を覚えてもらうようにした方が病気の特性上、あまり多くの方と接することを嫌う傾向にありますので良いと思います。
そして日々コミュニケーションをしっかりと取って、職場に馴染めるように配慮をして、様子がおかしいと感じたら医師の診断を促したり、支援員に相談をするなど、体調にも気を配る必要があります。
色々と大変そうと感じてしまうかもしれませんが、最初の接し方次第で今後の大きな戦力になると思いますし、それぞれの配慮で完治に繋がる可能性もあります。
うちの会社では周囲のフォローで職場と仕事に馴染み、会社としてステップアップの制度を設け、自立して長く働き続けられるように働きかけています。